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CLASSIX株式会社 営業/終活アドバイザー
高齢者を取り巻く環境の変化と地域見守りネットワークおよび民間連携の重要性を解説
超高齢化が叫ばれる昨今、高齢者見守りの重要性がさらに高まってきています。にもかかわらず、地域社会の繋がりは希薄化し、以前のように日常的な近所付き合いの中で生まれる見守りが機能しなくなっているのが現状です。
高齢者が安心して暮らしていくためには、地域自治体・民間会社が連携して見守りネットワークを展開していかなければなりません。
そこで本記事では、高齢化社会の現状と地域の見守りについて徹底的に迫ります。具体的な事例や自治体・民間サービスとの協力体制の重要性も解説していますので、住み慣れた地域で安心・安全に暮らしていく方法をお探しの方はぜひご覧ください。
地域の高齢者見守り活動を取り巻く現状
現在、日本国内における高齢者の生活環境は、従来とは異なる様式へと変化しています。生活環境の移り変わりに合わせ、高齢者の支援策も見直してかなければなりません。そこで、現代の高齢者を取り巻く環境を正しく把握するため、まずは次の4つの視点からの実態を確認していきましょう。
- 超高齢化の進行
- 一人暮らしの高齢者の増加
- 地域における人間関係の希薄化
- 高齢者を支える介護人口の減少
超高齢化の進行
総務省統計局の調べでは、2023年9月15日現在、国内に住む65歳以上の人口は3,623万人です。前年と比べ、高齢者の人数自体は多少減少しましたが、70歳以上に焦点を当てると、軒並み前年よりも増加しています。75歳以上に至っては、初の2,000万人超を記録しました。
総人口に占める高齢者の割合は、過去最高かつ世界で最も多い29.1%です。なお、高齢者の男女比をみると、おおよそ5:4の割合で女性のほうが多くなっています。80歳以上の人口も10%超です。つまり、現代の日本は、10人に1人が80歳以上という超高齢化時代を迎えています。
今後は、第二次ベビーブーム世代の高齢化をふまえ、高齢化率は40%に迫っていくことが予想されています。(参考:統計トピックスNo.138 統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-|総務省)
一人暮らしの高齢者の増加
超高齢化の進展にともない、一人暮らしの高齢者の数も増加してきています。総務省行政評価局が作成した「一人暮らしの高齢者に対する見守り活動に関する調査結果報告書」によると、2020年時点における65歳以上の独居者は男性約231万人、女性約441万人です。よって、高齢者の男性15.0%、女性22.1%が一人暮らしをしているということになります。独居高齢者の割合は今後も増加が見込まれており、2040年には男性20.8%、女性24.5%になる予測です。(参考:一人暮らしの高齢者に対する見守り活動に関する調査結果報告書|総務省行政評価局)
高齢者が一人暮らしをする理由として、一般的に頼れる人がおらず否応なしに独居となっているケースをイメージする方が多いでしょう。しかし、実際には、自ら望んで一人暮らしをしている高齢者もめずらしくありません。
ただ、独居高齢者には、詐欺や空き巣などの犯罪被害のリスクがあります。また、生きがいのない毎日では生活意欲が湧かなくなり、生活や環境が荒れていく高齢者の方も少なくありません。健康面の不安も常に付きまとうことから、病気やけが、自殺などによる孤独死の危険性も高いうえ、死後の発見も遅れやすいといえます。
孤独死に関してはこちらの記事で解説していますので、ぜひご一読ください。
内部リンク:https://gee-baa.com/dying_alone_watch_over/
地域における人間関係の希薄化
現代における地域社会は、以前とは異なる様相を呈しています。従来の各地方のコミュニティや農村社会では、地域の密接な関わり合いの中で、高齢者の見守りや子育てなどの協力体制が自然に形作られているのが一般的でした。
しかし、高度経済成長の中で、人口の都市部流出や核家族化の進展にともない、地域の人間関係はどんどん希薄になっていっています。内閣府が実施した「令和3年度 高齢者の日常生活・地域社会への参加に関する調査結果」によると、普段会えば挨拶をする程度の付き合いならあっても、立ち話や物のやり取りなどがあるのは半数程度です。また、近隣住民と相談し合ったり、お茶・食事を共にしたりするケースはわずか2割に満たないこともわかっています。
大都市圏においては、人口が少ない地域と比べ、近隣との密接な関わりが減少傾向です。一方、地方や過疎地域では、人手不足から見守りの目が十分に行き届いていません。特に、一人暮らしの高齢者は、同居者がいる場合より人との関わり合いが少ないことから、社会から孤立しがちです。
すなわち、現代日本は、ささいな頼み事や病気など、いざというとき気軽に助け合える社会とは言えません。あらかじめ何らかの対策を講じていなければ、万が一の事態が発生した際、窮地に立たされてしまうかもしれないのです。
一人暮らしの高齢者の現状と限界については、こちらの記事でもくわしく解説しています。
内部リンク:https://gee-baa.com/elderly_person_living_alone_watch_over/
高齢者を支える介護人口の減少
近年、必要な介護が受けられない「介護難民」の増加が懸念されています。高齢化が進む反面、高齢者を支える現役世代の人口は減少傾向だからです。
2020年の国勢調査では、15~64 歳人口は、総人口のうち59.5%の7,508万8,000人でした。要するに、現役世代約2人で1人の高齢者を支えなければならない計算です。現役世代約11人で1人の高齢者を支えていた1920年と比較すると、負担は5.5倍も増加しています。
また、今後の日本を支えることとなる15歳未満の人口の減少も問題です。現時点で、15歳未満の人数は総人口の11.9%となる1503 万2,000人しかおらず、世界的にみても最も少ない水準となっています。(参考:令和2年国勢調査 人口等基本集計結果 結果の概要|総務省統計局)
国立社会保障・人口問題研究所が調査した「日本の将来推計人口 (平成29年推計)」では、2065年には現役世代が4,147万人にまで割り込む見込みです。対して、65歳以上の人口は3,381万人になる可能性が示唆されており、このままでは約1.2人で1人の高齢者を支えなければなりません。
少子化もますます進行し、15歳未満の人口は684万人となるおそれが指摘されています。よって、介護人材の不足はますます深刻化していくでしょう(参考:日本の将来推計人口(平成29年推計)|国立社会保障・人口問題研究所)
現代の日本国内における人口の動態や社会問題についてお伝えしました。昨今、高齢者が増えているにもかかわらず、生活を支えるべき現役世代がいなくなりつつあります。特に配慮が必要な独居高齢者も増加していますが、以前のような地域ぐるみの自然なサポート体制はあまり期待できません。
そこで注目が高まっているのが「見守り」です。自治体では見守り機能を強化するため、さまざまな取り組みを行っています。
次の章では、見守りに関する理解を深めるため、地域ではどのような見守り方を行っているのかを確認していきましょう。
地域で行われる高齢者見守り活動
地域の自治体が実施する高齢者支援活動は、対象とする範囲や程度、専門性などによって見守り方に違いがあります。見守る方法を大きく分けると、主に以下の3種類です。
- 専門的な見守り
- 担当による見守り
- ゆるやかな見守り
見守りを必要とする高齢者の状況やニーズに応じ、それぞれの見守り活動が補完し合うことで、効果的な見守りサービスとなります。それぞれの見守り方をくわしく見てみましょう。
専門的な見守り
「専門的な見守り」とは、地域自治体や専門機関の業務の一環として提供される事業やサービスのことです。介護や高齢者の見守りに関する資格を有する専門家が、その知識を活かし、困難を抱える人を支援します。その他の見守り活動によって大きな困難を抱える高齢者が発見された場合、専門的な見守りへとつなげられるのが一般的です。
主な見守り活動の内容は、各種の高齢者関連施設との連携体制が構築された地域づくりの推進が挙げられます。各機関や担当、地域住民と相互に協力し合うことで、情報共有がスムーズになり、支援の輪から外れた高齢者や自発的にSOSを出せない方などの早期発見が可能です。
また、専門機関からも直接的な見守りサービスを提供しています。最もポピュラーな例が、電話やメール、SNSを活用した安否確認です。自治体によっては、ICT(情報通信技術)を使った緊急通報システムの貸与を行っています。
さらに、地域とのふれあいを創出する取り組みにも積極的です。地域交流イベント開催や老人サークル、ボランティア活動など高齢者が集う場をとおし、見守り効果を機能させることがねらいです。
担当による見守り
「担当による見守り」では、地域の特任職員が身近な相談相手として高齢者を自らケアしたり、専門機関につなげたりする活動が行われています。具体的には、地域の民生委員や自治会、町内会などが見守りの担当です。担当地域の高齢者の自宅を訪問して声をかけ、相談しながら必要に応じて専門的な見守りへとつなげます。
担当者による見守り方法の提供形態は、専任制もしくはチーム制の2つです。1対1の専任制の見守りは、対象となる高齢者との信頼関係が築きやすく、大人数との交流に抵抗感を抱く方に適しています。一方、チーム制だとたくさんの人に気にかけてもらっているという深い安心感につながるだけではなく、担当者の負担軽減にも効果的です。
また、ゆるやかな見守りで発見された支援を必要とする人に関する相談窓口としての機能も有します。
ゆるやかな見守り
「ゆるやかな見守り」とは、地域住民の気づきや、互助による見守り機能のことです。近隣住民とのコミュニケーションが活発に行われていれば、自然に見守りの輪が生まれます。
見守り対象となる高齢者の日常をよく知る人なら、いつもと少し異なる状況・状態や小さな違和感にも気付けるため、支援の要否を見分けるのがスピーディーです。たとえば、以下のような点から異変を察知できるのはゆるやかな見守りならではだといえます。
- 最近めっきり見かけなくなった
- ずっとカーテンが閉まったまま
- いつも参加するイベントでしばらく顔を見ない
- 電話に出ない
- メールの返信がない
普段の生活を知らなければ、上記のようなささいな出来事から異変を察知することはできません。
従来、地域コミュニティがゆるやかな見守りを担い、高齢者をさりげなく見守っていました。高齢化による諸問題や専門的な担当者の人手不足が深刻化する現代においては、ゆるやかな見守りこそ重要だといえます。しかし、個人主義やプライバシー保護の観点から、各家庭の事情に深入りすることはタブー視されているのが現実です。
一人暮らしの高齢者を対象とする地域ぐるみのサポートに関してはこちらの記事も参考になります。
内部リンク:https://gee-baa.com/elderly_people_living_alone_monitoring_municipalities/
地域で行われる見守り活動の方法を解説しました。本来、見守りは自治体の専門機関・地域の担当者・互助の3つが協働することで真価を発揮します。ところが、最近は地域住民の関係性やコミュニケーションに関する考え方が大きく変化しました。実際に、地域コミュニティによる連携した見守りができていないケースも少なくありません。
現代の地域コミュニティはなぜうまく機能しなくなってしまったのでしょうか。次の章では、地域コミュニティの抱える課題と問題について考えていきましょう。
高齢者を見守る地域コミュニティの課題
高齢者の見守りを考えるにあたっては、地域コミュニティへの理解が不可欠です。本章では、以下4つのポイントから地域コミュニティと見守りの関係性を明らかにします。
- 地域コミュニティとは
- 地域コミュニティの課題
- 地域コミュニティの機能
- 現代の地域コミュニティが抱える問題
地域コミュニティとは
そもそも「コミュニティ」の広義的な意味合いは「同一地域に居住する共属感情を持つ人々の共同体」です。すなわち、具体的には地域の自治会や町内会、農村における寄り合いなど、地縁的つながりから形成される組織や集団などを指します。
一方、総務省による「コミュニティ」の定義は下記のとおりです。
“「(生活地域、特定の目標、特定の趣味など)何らかの共通の属性及び仲間意識を持ち、相互にコミュニケーションを行っているような集団(人々や団体)」”
(引用:少子高齢化時代におけるコミュニティの役割~地域コミュニティの再生~|第三特別調査室 山内 一宏)
また、コミュニティの定義の中で、地域コミュニティを以下のとおりの位置付けとしています。
“「共通の生活地域(通学地域、勤務地域を含む)の集団」”
(引用:少子高齢化時代におけるコミュニティの役割~地域コミュニティの再生~|第三特別調査室 山内 一宏)
つまり、ある特定の地域内で、目的や経済活動、生活ルールなどを同じくする住民が相互に支え合う集団や組織が地域コミュニティであると解釈できます。
地域コミュニティの課題
地域コミュニティが担う役割は以下の4点です。
- 防災
- 福祉医療
- 所得形成
- 地域活性化
上記に加え、現代の地域コミュニティでは、超高齢化の進展と少子化、ポストコロナをふまえた持続的に見守れる方法の模索が急務です。地域が抱える高齢者の問題を明らかにし、その実情に合わせて見守り体制やその手段となるツールの利活用などを促していかなければなりません。
地域コミュニティの機能
地域コミュニティが持つ機能とは、社会を形作るミニマルな単位である家庭と、最大単位の公的主体となる政府・自治体との仲立ちです。基本機能として、以下の5つの役割を果たしています。
- 相互扶助機能:家族だけでは抱えきれない福祉や冠婚葬祭などをカバーする
- 地域文化維持機能:文化や伝統の管理・承継を行う
- 総合利害調整機能:まちづくりや防災など地域の安全な暮らしを守る
- 連絡調整機能:住民の意見を取りまとめ、行政と民間の架け橋となる
- 行政補完機能:道路交通網の整備や街の衛生維持・管理を担う
(参考:少子高齢化時代におけるコミュニティの役割~地域コミュニティの再生~|第三特別調査室 山内 一宏)
上記のほか、高齢者と若者・子どもなど、世代を超えた交流の場の形成・提供も重要な機能の一つです。
現代の地域コミュニティが抱える問題
古来、日本の地域社会は血縁や地縁から成る強い結束力を持っており、人々の生活基盤として根付いていました。しかし、戦後の高度経済成長にともない、人口が流動し、核家族化が進むにつれ地域コミュニティの意義が変化しつつあります。
都市部では住民間のつながりが弱まり、地域コミュニティの機能を果たせなくなっているケースもめずらしくありません。地域住民全体で協力し合いながら維持してきた高齢者の介護は、各家庭で担うのがスタンダードとなり、頼れる家族がいない独居老人は孤立化しがちです。
一方、人口が都市部へと流れた地方では、過疎化と高齢化の急激な進展により地域コミュニティ自体がなくなりつつあります。高齢者の暮らしをサポートする若者が少なく、見守りが行き渡っているとは言えない状況です。
こうした問題をふまえ、厚生労働省では、高齢者が住み慣れた地域で自立した生活を送り、自分らしい最期を迎えるため「地域包括ケアシステム」の構築を進めています。
離れて暮らす高齢のご家族に関する心配事を抱えている方は、こちらの記事もぜひお読みください。
内部リンク:https://gee-baa.com/watch_over_parents/
地域コミュニティの課題と定義・機能などの基本情報と、問題視されているポイントを説明しました。住民の暮らしに欠かせないさまざまな機能を持つ地域コミュニティ。しかし、現代では本来の機能を果たせていない地域が多いことが問題です。
地域コミュニティの弱体化による高齢者見守りの不足を補う「地域包括ケアシステム」とは、一体どのようなものなのでしょうか。次の章では、政府が推進する地域包括ケアシステムについてくわしくお伝えします。
地域包括ケアシステムによる高齢者の見守り
現在、国を挙げて進められているのが「地域包括ケアシステム」の構築です。地域包括ケアシステムは、高齢者が地域社会でQOLを維持・向上させ、よりよく生きていくためのしくみとして構想されています。次の2点から、地域包括ケアシステムの重要性を確かめていきましょう。
- 地域包括ケアシステムとは
- 高齢者見守り活動をけん引する地域包括支援センター
地域包括ケアシステムとは
「地域包括ケアシステム」とは、自治体や医療機関が持つ役割を、地域一体となった介護・保険サービスとして提供する枠組みのことです。病気になった際、ただ病院を受診するのでは、高齢化の進行とともに医療財源が圧迫されていきます。また、支援を必要とするすべての高齢者に医療が行き渡らないおそれも否めません。
そこで、持続可能な支援体制として、地域全体で高齢者を見守り支援するしくみとして考案されたのが地域包括ケアシステムです。下記の4つの項目を根幹として、さまざまな取組が進められています。
- 住まい
- 医療
- 介護
- 生活支援・健康づくり
高齢者の問題や適切なサポートは、地域が抱える事情によってさまざまです。地域の特性や問題に応じ、自主的かつ主体的に高齢者を支援するしくみを作り上げていく必要があります。具体的にどのような取り組みが行われているのか、上記の項目別に見ていきましょう。
住まい
1つ目のサービスは「住まい」です。住まいは、高齢者の安全な暮らしに必要なすべての要素の基盤となります。プライバシーを守り、人間としての尊厳を保つためには、安全に暮らせる住居の確保が大切です。住まいが安定した後、はじめてその他のケアシステムが機能すると言っても過言ではありません。
医療
2つ目のサービスは「医療」です。要するに、高齢者が病気になったときの医療サービスを指します。かかりつけ医や地域病院との連携など、日常的な医療体制の構築は安心な暮らしの中に欠かせない要素の一つです。救急救命や入院治療に対応する急性期病院、亜急性期・回復期リハビリ病院など、緊急時の対応機能も担っています。
介護
3つ目のサービスは「介護」です。地域に根差した介護ケアサービス一覧を、下記の表にまとめました。
【介護ケアサービス一覧表(一部抜粋)】
介護サービスの類型 | 具体例 |
訪問型 | ・夜間対応型訪問介護
・定期巡回・随時対応型訪問介護看護 |
通所型 | ・地域密着型通所介護
・療養通所介護 ・認知症対応型通所介護 |
訪問+通所+宿泊型 | ・小規模多機能型居宅介護
・看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス) |
入居型 | ・認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
・地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護 ・地域密着型特定施設入居者生活介護 |
(参考:介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」|厚生労働省)
上記のほかにもさまざまなサービスがありますので、介護を必要とする場合は比較・検討してみてください。
生活支援・健康づくり
4つ目のサービスは「生活支援・健康づくり」です。介護保険制度における地域生活支援サービスを提供する活動のうち、介護予防・日常生活支援総合事業を指します。
高齢者の暮らしには、家事、買い物、草むしりなど、日常生活における身の回りの支援を要する場合も少なくありません。そこで、自治体と協働する民間企業やNPO、ボランティアなどが高齢者のニーズを把握し、次のようなゆるやかな見守りという形でサポートする役割を担います。
- 配達
- 配食
- 安否確認
また、介護や支援が必要な状態になることを防止する事業にも取り組んでいます。近年は、老人クラブや自治会によるシニアサロン、コミュニティカフェなどの運営をとおして、介護予防や人と人とのつながりの創出を目的とする活動も盛んです。
高齢者見守り活動をけん引する地域包括支援センター
地域包括ケアシステムの中核を担う組織として「地域包括支援センター」が設置されています。地域包括支援センターとは、高齢者の保健医療の向上・福祉の拡充のために自治体が主体となって運営している組織です。
令和4年4月末現在で全国5,404カ所に地域包括支援センターが設置され、地域住民と協力し合いながらネットワーク構築を推進しています。保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員などの職員が配置されており、地域に住む高齢者の総合的な相談と権利擁護や地域の支援体制づくり、介護予防の必要な援助などが主な事業内容です。
高齢化社会の支援体制をけん引する地域包括ケアシステムについて解説しました。各自治体では、団塊世代が75歳以上となる2025年までの構築完了を目指して取り組みが進められています。
昨今、地域包括ケアシステムの構築に向けて「地域見守りネットワーク」の拡充を推進する自治体が増えていることをご存知でしょうか。次の章では、高齢者と地域見守りネットワークにはどのような関係があるのかに関して触れていきます。
高齢者の「地域見守りネットワーク」
住み慣れた場所で高齢者がよりよく暮らしていくための取り組みとして、専門・担当・地域住民が力を合わせて新しい見守りモデルを生み出す動きが活発化しています。高齢者サポートの新体制の一つが、近年それぞれの自治体で展開され始めている「地域見守りネットワーク」です。本章では、地域見守りネットワークの意義と目的、役割について説明します。
地域見守りネットワークとは
地域見守りネットワークとは、地域の専門機関・民間事業者・住民の三者がそれぞれの役割を活かし、相互に連携しながら見守り活動を行う体制モデルのことです。高齢者を含むすべての住民が安心して生活できる地域づくりとして、ネットワーク内における生活支援・介護予防サービスの提供などを介して見守り活動を行っています。
地域見守りネットワークの役割
地域見守りネットワークの役割は、以下の4つです。
- 行政・自治体との連携
- 情報の一元化
- 見守りの普及・啓発
- 人材育成
地域見守りネットワークの構成員が情報を共有し、それぞれの機能を稼働させることで上記の役割を連携して実施します。また、生活支援コーディネーターにより活動の普及・啓発が進められるほか、地域における見守りの環境づくりとアナウンス、人材の確保もネットワークの役割の一環です。
地域見守りネットワークの定義と役割をお伝えしました。地域保活ケアシステムの支柱として、地域全体で見守りネットワーク網を広げていく取り組みが進められています。
地域見守りネットワークをはじめとして、自治体が実施する支援策は個性豊かです。地域の特性を活かし、さまざまな取り組みが行われています。次の章では、各自治体における具体的な取組事例をいくつかピックアップして見ていきましょう。
地域自治体による高齢者見守りの取組事例
見守り活動の内容や特色は、自治体によってさまざまです。ここでは、下記7つの自治体による地域ぐるみの高齢者支援活動の代表的な事例を紹介します。
- 独居・高齢者の見守り事業
- 高齢者居場所づくり事業
- 認知症高齢者見守り支援事業
- 高齢者の消費生活の安全確保
- 高齢者見守りボランティア事業
- 地域コミュニティカフェ・シニアサロン
- ICTの活用
独居・高齢者の見守り事業
独居高齢者のサポートに特化した地域ぐるみの見守りの取り組み事例です。
【事例】
地域 | サポート内容 |
豊中市 | シルバー人材センターの職員を派遣し、家事や掃除、電球の取替など高齢者の生活における小さな困り事をサポートしている。 |
石川県 | 民間事業者との協定に基づき、業務内でのちょっとした気付きを行政の窓口に連絡することでひとり暮らし高齢者をゆるやかに見守っている。 |
高齢者居場所づくり事業
高齢者地域コミュニティの構築を中心とした見守りの取り組み事例です。
【事例】
地域 | サポート内容 |
枚方市 | 高齢者が自由に集える交流の場を創出し、健康的で活力あふれる生活の実現を目指す。 |
弘前市 | 地域住民が公共施設などに集まり、さまざまな講座を開催する「高齢者ふれあい居場所づくり事業」を実施している。 |
認知症高齢者見守り支援事業
認知症を患う高齢者の生活上の安全を守る見守りの取組事例です。
【事例】
地域 | サポート内容 |
京都市 | 認知症の高齢者でも気軽に出歩ける地域づくりとして、交通機関と連携した声かけ事業やSOSネットワークを築いている。 |
東京都大田区 | 万が一のときに向けて自らできる備えとして、サービス利用申請者に「見守りキーホルダー」を配布している。 |
高齢者の消費生活の安全確保
詐欺などの被害に遭いやすい高齢者の安全な消費生活を守る取組事例です。
【事例】
地域 | サポート内容 |
大阪市 | 見守り者向けのハンドブックを作成し、高齢者をターゲットとする悪質商法の注意喚起を行っている。 |
富山県 | 「くらしの安心ネットとやま」による消費者被害防止ネットワークを組織し、官民協働で高齢者の消費生活を見守っている。 |
高齢者見守りボランティア事業
地域住民の互助ボランティア活動として実施している見守りの取組事例です。
地域 | サポート内容 |
小平市 | 「介護予防見守りボランティア事業」を展開し、地域に住む高齢者がお互いに見守り合う体制を構築している。 |
大阪市天王寺区 | 対象の希望者に地域住民やボランティアが訪問して声かけを行う「独居高齢者等見守りサポーター事業」を行っている。 |
地域コミュニティカフェ・シニアサロン
地域コミュニティ機能を有するカフェやサロンを展開している見守りの取組事例です。
【事例】
地域 | サポート内容 |
新潟県 | 県内2,000カ所以上に「地域の茶の間」を設置し、いつでも人との会話や食事が楽しめる。 |
札幌市 | 「Hokkaido コミュニティCafe クミアイ」の加盟店内で各種イベントを開催し、地域交流の機会を提供している。 |
ICTの活用
高齢者にも普及が進むスマートフォンなどのICT(情報通信技術)を利用し、家族と地域が高齢者を相互に見守れる体制を作る見守りの取組事例です。
【事例】
地域 | サポート内容 |
大阪市 | 大阪市社会福祉協議会では「ICTでもつながりづくりプロジェクト」として最新の通信技術の地域への活用法を話し合っている |
稲城市 | 電球やセンサーなどのICTグッズを活用した見守り事業にいち早く取り組んでいる |
各地域における見守り活動・事業の事例を紹介しました。支援の担い手となる専門機関や民間事業者、現役世代だけではなく、高齢者同士で支え合う見守り方法も推進されています。
事例を知る中で、高齢者の見守りは多くの人の手で支えられていることが見えてきたと思います。次の章では、地域の見守りネットワーク・システムを担う専門機関について解説します。
地域の高齢者見守りを支える担い手
これまでお伝えしてきた見守り活動は、多くの担い手から支えられることで成り立っています。高齢者の見守りの担い手は、主に次の7者です。
- 民生委員
- 生活支援コーディネーター・協議体
- 自治会・町内会
- 老人クラブ
- 社会福祉協議会
- NPO法人
- 民間の見守りサービス事業所
上記それぞれの概要と特徴を解説しますので、相談時の参考にしてください。
民生委員
「民生委員」とは、民生委員法にもとづく特別職の地方公務員として、国から委嘱された特別職の準公務員です。実際に当該地域に住む人を相談役に据えることで、より見守りを身近な存在にするのがねらいです。気軽な相談相手としての役割をこなしつつ、各専門機関などと連携して地域の高齢者を支援の輪につなげる機能も担います。
生活支援コーディネーター・協議体
「生活支援コーディネーター」は、正確には「地域支え合い推進員」と呼ばれる専門職です。地域において、生活支援・介護予防サービスの提供体制の構築に向けた各機能のとりまとめを行います。主な職務は、見守りに関する資源開発や、ネットワーク・連携機能の構築です。
一方「協議体」とは、町村が主体となるネットワークです。各地域の生活支援コーディネーターと支援・介護予防サービスの提供元が手を取り合い、定期的な情報共有をとおして連携を強化するための中核としての役割を持ちます。高齢者のニーズを視覚化し、地域の各見守り機関と連携しながらサポートを提供することで、見守りネットワークの構築を促しています。また、各種見守りサービスとのマッチングも重要な使命です。
自治会・町内会
「自治体」や「町内会」は、先に説明した地域コミュニティの中心として、地域の生活環境の整備を行う組織です。行政とも連携しながら、見守り体制のしくみ作りを展開することで地域に住む高齢者をサポートしています。互助の取り組みだからこそ、地域に根ざしたきめ細やかな支援を提供することが可能です。
老人クラブ
「老人クラブ」とは、地域での仲間づくりをとおし、楽しく生きがいのある老後と健康・自立の促進を目指すグループです。「健康」「友愛」「奉仕」の3つの精神を軸に、自主的な活動を展開しています。主な活動内容は、軽い運動やレクリエーションの開催による高齢者の健康増進です。また、趣味やボランティアなどの活動を行うことで、生活上の生きがいや張り合いを生み出すきっかけを提供しています。
社会福祉協議会
「社会福祉協議会」とは、社会福祉法にもとづき、地域社会の福祉の充実・向上を理念として設置されている機関です。全国の都道府県、市区町村に拠点が置かれています。自治体の主体はあくまでも住民という考え方から、実際に地域で暮らす人々を中心とする福祉のまちづくりを支援しています。
NPO法人
「NPO法人」とは、特定非営利活動促進法にもとづき法人格を取得した、社会貢献活動を行う民間団体です。経済活動を目的とせず、現代における多様化した社会のニーズに応えます。高齢者に関する相談・情報提供や居場所づくりのほか、話し相手になったり生活・外出支援をしたりと多岐にわたる活動内容です。
民間の見守りサービス事業所
見守りサービスは、自治体だけではなく民間事業所からも提供されています。現代における高齢者の生活上の困り事を解決する手段として、近年注目されるようになりました。民間企業が独自で提供する見守りサービスもありますが、地域自治体と連携している事業も多数展開されています。
地域の高齢者見守りはどのようなところから提供されているのか紹介しました。見守りサービスには、多種多様な提供元がある見守りサービスがあります。しかし、自治体が運営する組織だけでは、地域全体の高齢者をカバーするのは困難です。そこで、民間の見守りサービスの重要性が注目度を増しています。
次の章では、地域自体と共同して見守りネットワークを構築している民間サービスの重要性を解説します。どのような見守り手段があるのかもお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。
地域自治体の高齢者見守り活動と連携する民間サービス
民間の見守りサービスについて、以下の3つに分けてしくみを説明します。
- 地域・民間事業所が協力して高齢者を見守る意義
- 地域見守り協定の締結
- 民間事業所が関わる見守りの類型
地域・民間事業所が協力して高齢者を見守る意義
地域自治体の視点のみでは、すべての高齢者に見守りが行き届かないおそれがあります。増え続ける高齢者に対し、限られた地域の職員だけでは対応に限界があるためです。そもそも、自治体はあくまでも地域全体の福祉向上を目的としています。そのため、個々のケースへきめ細やかに対応するのは困難です。また、自治体では最新の見守りツール・グッズや流行をすばやく取り入れることも難しい場合も少なくありません。
生活関連事業を展開する各種民間事業所と連携することで、より効果的な危機察知・安否確認が可能になります。自治体だけではできないことでも、民間のサービスと協力すれば幅広い困り事に的確なサポートを提供できるようになるでしょう。
地域見守り協定の締結
自治体と民間サービスの協力体制の一形態が「地域見守り協定」です。地域見守り協定を結ぶことで、高齢者の生活との関わりが深い事業所と地域自治体が連携し、見回り体制を構築します。たとえば、銀行やスーパーマーケットなど、高齢者が日常的に利用する民間事業所と協力して見守っていれば、異変の察知や情報提供がスムーズです。必要に応じて、警察や消防、地域包括支援センターをはじめとする専門機関につなげます。
民間事業所が関わる見守りの類型
民間事業所が提供する見守りには多彩なサービスがありますが、ここでは代表的な以下の4つを紹介します。
- 自宅訪問による見守り
- 宅配・配食サービスによる見守り
- ICTツール・グッズによる見守り
- 電話・メール連絡による見守り
利用を検討する際は、あらかじめ各サービスの特徴を確認しておきましょう。
自宅訪問による見守り
実際に民間のスタッフが高齢者の自宅を訪問し、安否確認を行うサービスです。目視で高齢者の様子を確認できるため、安心感が高まります。人と直接のふれあいが生まれることから、一人暮らしの孤独感を和らげる効果も期待できるでしょう。
ただ、人との直接的なコミュニケーションを負担に感じる性格の方にはあまり適しているとは言えません。また、毎日訪問できるわけではなく、緊急事態に迅速に対応できるかどうかは保証できない点が問題です。
宅配・配食サービスによる見守り
宅配・配食サービスにおいて、本来の業務の付随プランとして見守りを提供します。ほとんど毎日定刻に訪問してもらえるため、より見守りの目が行き届きやすいでしょう。また、日々の栄養管理にもなる点もメリットです。ちょっとした買い出しを依頼できるサービスなどもあります。
しかし、宅配・配食サービスでは、常時見守れるわけではありません。また、あくまでも付随サービスですので、見守りに関する従業員教育が徹底されていない可能性もあります。そのため、見守りサービスに細やかな安否確認や気配りを求めている場合には向いていません。
ICTツール・グッズによる見守り
通信技術を活用した見守り方法です。カメラやセンサー、緊急通報装置などの従来の形態から、loTと呼ばれる家電を利用した見守りまで、さまざまなツール・グッズから選べます。
ただし、ツールやグッズを使う見守りは、その機器を自在に操作できることが前提です。カメラやセンサーでは、自分の生活を常に他社から見張られているようで、拒否感を示す方もめずらしくありません。家電などにさりげなく潜ませる見守りツールは抵抗感も少なく操作も不要ですが、緊急事態が発生してしばらく経たないと反応しないタイプが大半です。よって、万が一の安心の担保としては心許なく感じるかもしれません。
電話・メール連絡による見守り
決められた時刻に電話がかかってきたり、メールが送信されたりするサービスです。見守りの知識に長けたオペレーターから毎日電話対応してもらえるため、安心感があります。また、電話が負担だという方にはメールの送受信で安否や健康状態を確認することも可能です。電話やメールのやり取りは毎日行われるため、異常事態の察知も比較的早いといえます。他者とのコミュニケーションが生まれ、日々の楽しみができることもうれしいポイントです。
ただ、電話やメールでは、本人が家族を心配させまいとして虚偽の申告をする可能性があります。「このくらい平気だろう」と思っていると、万が一のことが起こらないとも限りません。とはいえ、正しく利用すれば非常に便利かつ手軽な見守り方法であり、大きなコストも不要です。
見守りサービスの累計や選び方についてもっと知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
内部リンク:https://gee-baa.com/watch_over_the_elderly/
地域自治体・民間との連携体制と、見守る手段のメリット・デメリットをお伝えしました。自治体による高齢者の見守り活動は高齢者にとって有用ですが、民間のサービスとうまく組み合わせることで安心感がさらに高まるでしょう。
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まとめ
超高齢化が進み、従来の自然な見守りが機能しなくなった現代においては、地域ぐるみで高齢者を支える方策が求められています。自治体ではさまざまな取り組みや事業が推進されていますが、すべての高齢者に行政の手が行き届くとは限りません。大切な方のよりよい暮らしと命を守るためには、民間の見守りサービスもうまく併用することをおすすめします。
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