【この記事を書いた人】
CLASSIX株式会社 営業/終活アドバイザー
身寄りがないお年寄りの増加と問題点を踏まえたサポートや見守りサービスを選ぶポイント
近年の日本では、さまざまな要因により、一人暮らしの高齢者が増加しています。やむを得ず一人暮らしをしている方もいますが、自ら進んで独居を選択している高齢者も少なくありません。
ただ、身寄りがない独居老人は、感情・経済の両面で困難を抱えがちです。高齢になるにつれ、支援なしには最低限の生活すら維持できなくなるおそれがあり、一人暮らしに限界を感じる方も多いでしょう。最悪の場合、孤独死の危険性があることも想定しておかなければなりません。
本記事では、一人暮らしの高齢者が増えている理由とリスクを紹介します。各問題を踏まえたうえで、高齢者が一人暮らしでも自分らしく生きていくための対策や見守りの必要性、サポート・グッズの選び方も解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
一人暮らしの高齢者の現状
まず、一人暮らしの高齢者の現状を知るため、次の3つの視点から考えていきます。
- 独居老人とは?
- 独居老人の統計上の推移
- 独居老人が増える背景
本人の意向で、自ら独居を選択しているケースも少なくありません。しかし、現代日本が抱える社会問題も、一人暮らしをする高齢者の増加に大きな影響を与えています。定義の確認や統計も踏まえ、一人暮らしのお年寄りの増加に関する理解を深めていきましょう。
独居老人とは?
そもそも、独居老人とは、一般的に65歳以上で一人暮らしをしている高齢者を指します。「お年寄りが一人で暮らすなんて……」とマイナスイメージを抱く方もいるでしょう。しかし、高齢者が一人暮らしすること自体は、決して悪いことではありません。一人でも生きていける生活基盤を築いて経済的・身体的に自立して暮らせるのは、素晴らしいことです。
とはいえ、高齢になるにつれ、さまざまな問題が浮上してくるおそれがあります。現状に満足していたとしても、一人暮らしに限界を感じるかもしれません。日常生活におけるサポート・介護から看取りと死後の手続きまで、今後起こりうるあらゆる不安を考慮しておく必要があるでしょう。
独居老人の統計上の推移
2020年の国勢調査によると、日本における65歳以上の人口は3,533万5,805人であり、そのうち単独世帯数は671万6,806人です。15年前の平成17年の調査結果である386万4,778人と比較して、285万2,028人増加しています。つまり、現代は高齢者の5人に1人が独居している状況なのです。(参考:令和2年国勢調査 人口等基本集計結果 結果の概要|総務省統計局)
また、令和5年版高齢社会白書では、1980年代から現在に至るまで、一人暮らしの65歳以上の人口は男女とも増加の一途を辿っています。独居老人の数は今後も増え続けると予測されており、高齢者が安心して暮らせる環境整備やサービスの重要性がますます高まっていくでしょう。
独居老人が増える背景
一人暮らしの高齢者が増える背景には、主に以下4つの要因が関与しているといわれています。
- 長寿化
- 未婚率の上昇
- 頼れる家族や身寄りがない
- 本人の希望
独居老人の増加とそれぞれの要因との関連性をみていきましょう。
長寿化
寿命が長くなるにつれ、一人暮らしの年数も増えていきやすいといえます。令和2年時点の平均余命は男性81.64年、女性87.74年であり、昭和22年と比べると男女とも約1.6倍です。(参考:令和2年簡易生命表の概況|厚生労働省)
もとより独居の場合はもちろん、配偶者との死別により残された長い時間を一人で過ごす方も少なくありません。「平成26年度 一人暮らし高齢者に関する意識調査結果」によると、60代から独居となる方の割合が最も多くなっています。(参考:平成26年度 一人暮らし高齢者に関する意識調査結果|内閣府)寿命から考えると、20年以上もの間を一人で過ごさなければならないということです。
令和2年の国政調査では、高齢になるほど配偶者との死別の割合が増加していき、85歳になると6割以上にも上ります。(参考:令和2年国勢調査 人口等基本集計結果 結果の概要|総務省統計局)長寿社会である日本では、誰にでも独居になる可能性があることを理解しておかなければなりません。
未婚率の上昇
現代日本では、以前にも増して独身のまま高齢を迎える方が多くなっています。内閣府の「令和4年版少子化社会対策白書」によると、令和2年時点の50歳以上で一度も結婚したことがない人の割合は男性28.3%、女性17.8%です。未婚の50歳以上の割合は、昭和50年からの50年間で、男性16.6倍、女性5.3倍に増加しています。(参考:令和4年版 少子化社会対策白書|内閣府)
また、同調査で未婚の25歳~34歳を対象になぜ結婚しないのかアンケートを取ったところ、出会いや資金不足のほか、結婚に対する価値観に関する回答が多く見られました。(参考:令和4年版 少子化社会対策白書|内閣府)人生の選択肢が増えたともいえますが、一人で暮らしていくためには、老後の備えや身寄りがない場合の対策を考えておく必要があるでしょう。
頼れる家族や身寄りがない
高齢で介護が必要であっても、誰にも頼れないため、やむを得ず一人暮らしをしている方もいます。内閣府による「令和3年度 高齢者の日常生活・地域社会への参加に関する調査結果」からは、一人暮らしの60歳以上のうち、1割程度が日常の動作に困難を抱えているにもかかわらず、独居せざるをえない状況が読み取れます。(参考:令和3年度 高齢者の日常生活・地域社会への参加に関する調査結果|内閣府)
また「平成24年度 高齢者の健康に関する意識調査結果」によると、病気など緊急事態のとき誰にも頼れないと感じている一人暮らしの60歳以上は、全体の2割近くです。さらに、同条件の7.6%には相談に乗ってくれる相手がいないこともわかっています。(参考:平成24年度 高齢者の健康に関する意識調査結果|内閣府)
責任感の強さから「誰にも迷惑をかけられない」と考え、自ら社会と距離を取る人も少なくありません。先祖代々のお墓を墓じまいできず、一人で住み続けているケースもあります。身近に家族がいない高齢者の意識として、離れて暮らす兄弟がいたとしても、相手の家族や状況を考えると安易に頼れないのも無理はないでしょう。
墓じまいに関する疑問を解決したい方は、こちらの記事もぜひご覧ください。
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本人の希望
現状に健康上・経済面の不満がないうえ十分幸せであり、このままの生活を続けていたいと考える高齢者の方もめずらしくありません。内閣府の「平成26年度 一人暮らし高齢者に関する意識調査結果」によると、独居中の65歳のうち78.7%が自分の生活に満足していると回答しています。同じく、76.3%の人が一人暮らしの現状を変える必要性を感じていません。(参考:平成26年度 一人暮らし高齢者に関する意識調査結果|内閣府)
高齢者であっても、何事にも縛られず、自由に生きていたいと考える人もいるでしょう。就業や社会活動への参加により、精力的な毎日を過ごしている方もいます。現状に満足している人にとっては、一人暮らしを継続する選択こそが自分らしく生きるための最善策なのです。
現代の日本における独居老人の現状について、統計および社会的要因から確認しました。やむを得ない状況や本人の考え方など理由はさまざまですが、一人暮らしの高齢者は年々増加を続けています。
本人の意向で独居を続けること自体はまったく問題ありません。しかし、高齢者の一人暮らしには、複数の問題点が指摘されています。次の章では、高齢者が一人暮らしを続けるうえでの問題点を解説します。
高齢者が一人暮らしを続ける7つの問題
高齢者が一人暮らしを続けることには、下記のような問題点が生じるおそれがあります。
- 社会との繋がりを保てなくなる
- 孤独感に苛まれる
- 生きがいが見つからない
- 経済的な不安
- 健康寿命が短くなる
- 病気・けがをしたときに頼れない
- 孤独死の危険性
長期にわたる独居は、人との関わりが希薄になりがちで生活に張り合いがなくなることが多いうえ、経済面や健康上にも深刻な影響を与えかねません。上記7つの一人暮らしの高齢者が抱えるリスクをそれぞれ説明します。
社会との繋がりを保てなくなる
一人暮らしをしていると、高齢になるにつれ孤立しやすくなります。就業している間は社会との繋がりを確保できるかもしれませんが、退職後に人との繋がりがなくなる方も少なくありません。社会活動・学習活動に参加するなどして意欲的な生活を送っていれば、社会との繋がりを感じられるでしょう。しかし、内閣府の「令和5年版高齢社会白書」では、65歳以上の4割程度の方はどのグループ活動にも属していないことがわかっています。(参考:令和5年版高齢社会白書|内閣府)
近年は高齢者サロンをはじめとするコミュニティや地域の交流イベントが開催されているとはいえ、自ら積極的に参加することが必要です。とはいえ、心身ともに健全な状態でなければ人と関わろうとする意欲が湧きにくく、結果的に社会的な孤立を招きやすくなります。地域社会との関係性が希薄だと、犯罪・詐欺被害に巻き込まれるリスクも高まるため、何らかの見守り対策が必要です。
孤独感に苛まれる
現代は、独居老人が孤独感を感じやすい環境になっています。インターネットショッピングやオンライン手続きなど、人と直接会わなくても生活していける便利なシステムが整っているためです。
「令和3年度 高齢者の日常生活・地域社会への参加に関する調査結果」によると、一人暮らしの60歳以上のうち、44.3%が人との付き合いがないと感じることがあると回答しています。また、未婚の方や一人暮らしの方はほかの世帯構成と比べて常に孤独を感じている方の割合が圧倒的に多いこともわかりました。(参考:令和3年度 高齢者の日常生活・地域社会への参加に関する調査結果|内閣府)一人暮らしであっても問題なく生活していける反面、他者とふれあう機会が減少しがちであり、強い寂しさを感じやすいのです。
また、身近に家族などの身寄りや気を許せる友人がいない場合、自らの存在意義を感じにくく、寂しさを感じる方も少なくありません。一人暮らしの高齢者にとって、定期的に他者と会ったり会話したりする機会を持つなど、日々にちょっとした刺激や張り合いを与えることが重要だといえます。
生きがいが見つからない
高齢者が一人暮らしには、生きがいがないと感じる方もめずらしくありません。高齢になると、夫婦や孫などをはじめとする家族との団らんに生きがいを感じる方が多いことがわかっています。(参考:平成8年度 高齢者の健康に関する意識調査の結果について 概要版 10 生きがいを感じる時|内閣府)しかし、独居老人には常時ともに暮らす家族はいません。孫などの身内が会いに来る機会もめったにない、もしくは生涯未婚で身寄りがない方だと、生きる喜びが感じられない方も多いでしょう。
家族団らんの機会が少ないとしても、心身ともに健康で職に就いていれば生きがいを感じられる方もいます。上記の調査によると、仕事に打ち込んでいるときに生きがいを感じる高齢者が多いためです。ただ、高齢になっても働き続けられる方は多くありません。退職後に社会生活における役割がない場合、生きがいや「誰かのためになっている」という実感を得にくいといえます。体力・気力の衰えから、夢中になれる趣味が見つからない方もいるでしょう。
経済的な不安
独居老人の中には、経済的に生活の維持が困難な方もいます。退職してからの老後は、年金やこれまでの蓄えを切り崩して生活していかなければなりません。職が見つかればば生活費を稼ぐこともできますが、高齢だと再就職も困難です。もし勤め先が見つかったとしても、一生涯をとおして働き続けるのはほぼ不可能に近いでしょう。
実際に、令和2年時点ですべての生活保護受給者のうち52%を高齢者が占めると報告されています。(参考:生活保護制度の現状について|社会保障審議会生活困窮者自立支援及び生活保護部会(第14回))また、厚生労働省の調べによると、生活保護を受給する高齢者が増加傾向にあり、令和3年度にはそのうちの半数を超える割合が単身世帯です。(参考:令和3年度被保護者調査|厚生労働省)
現役時代の就業状況や貯蓄額によっては、生活保護を受給しなければ最低限の暮らし向きを維持できなくなる可能性も考慮しておかなければなりません。
健康寿命が短くなる
一人暮らしの高齢者は、食生活および心のバランスが崩れがちなため、健康寿命への悪影響が懸念されます。「令和3年度 高齢者の日常生活・地域社会への参加に関する調査結果」によると、一人暮らしをしている60歳以上のうち44%が健康的な食生活を保つことが困難です。(参考:令和3年度 高齢者の日常生活・地域社会への参加に関する調査結果|内閣府)健康の維持・向上に大きな役割をになっているものこそ食事であり、栄養バランスが崩れると健康寿命が短くなるおそれがあります。
また、同調査では、4割近くの独居老人がおしゃれに大きな関心を持たない傾向があることもわかりました。人の目がない生活では、身なりにも無頓着になっていくケースも多いのかもしれません。心の健康は、衣・食・住がバランスよく満たされたうえに成り立つものです。精神的に不安定だと、うつ病や認知症の発症リスクも高まりやすく、いきいきとした老後を送れません。
病気・けがをしたときに頼れない
一人暮らしの高齢者は、医療費負担の増加や見守りの必要性なども考慮する必要があります。心身の衰えから受診の回数が増加するうえ、独居老人は病気やけがの発見が遅れやすいためです。また、身元保証人が見つからず、入院の手続きや治療がスムーズに進まないケースも少なくありません。
老化による身体的な問題や認知症から一人で生活できなくなった際、家族がいれば在宅介護を希望する方も多いでしょう。しかし、身寄りがない独居老人だと、外部からのサポートを受ける以外の選択肢はありません。事前に生活設計を見積もっておくことはもちろん、リーズナブルで利用しやすい高齢者支援サービスの選定が必要です。
身元保証人に関する不安や疑問をお持ちの方はぜひこちらの記事もお読みください。
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孤独死の危険性
独居老人は、孤独死の危険性が問題視されています。国土交通省がまとめた「死因別統計データ」によると、東京都区部における孤独死は増加傾向です。2018年の孤独死者数は5,513人であり、そのうちの約7割を65歳以上の高齢者が占めます。死因は病気や自殺、事故などさまざまですが、原因不明の死亡者も多く、あらゆるリスクへの対策が欠かせません。(参考:(参考)死因別統計データ|国土交通省)
加えて、一人暮らしの高齢者は災害発生時やパンデミックなどの対応および情報提供、安否確認が遅れやすいため、被害が深刻化する危険性が高いといえます。万が一のことがあったときは、死後事務や相続など、さまざまな手続きが必要です。しかし、身寄りがない独居老人は任せられる人がおらず、最悪の場合は無縁仏になってしまうかもしれません。
独居老人の生活における7つのリスクについて解説しました。高齢者が一人暮らしをするうえでは、他者とのふれあいや心情的な不安だけではなく、健康・経済面における問題や生死に関わるリスクなども考慮しなければなりません。
さまざまな危険がある中で、高齢者が一人暮らしでも安心して生きていくためにはどのような対策を講じれば良いのでしょうか?次の章では、独居老人が自分らしい老後を過ごすためのポイントを紹介します。
独居老人が自分らしく暮らすための3つの対策
より良い老後を実現するため、あらかじめ下記3点のような手段で対策を講じておくことをおすすめします。
- 安心して生活していける基盤を整えておく
- 終活をする
- 見守りサービスを活用する
自らの手による環境整備およびあらゆる面における生活設計に加え、外部の助けを借りることも重要なポイントです。それぞれの対策をくわしく確認していきましょう。
安心して生活していける基盤を整えておく
一人暮らしの高齢者が安心して生活を送るためには、健康に動けるうちに、身の回りの環境を整えておくことが不可欠です。生活上のあらゆるリスクを把握し、一人でも暮らしやすい環境に整えなければなりません。
社会とのつながりを保てるよう、できるだけお住まいの地域のコミュニティで交流する機会を持ちましょう。思い切って老人サークルやボランティア活動などに参加すれば、知り合いが増え、自分を気にかけてくれる存在に出会えるかもしれません。
また、自力のみでの生活に限界を感じてきた際に備え、家事や外出時のサポートを受けられるサービスや相談窓口を調べておきましょう。身体的に不自由になる可能性も考慮し、介護・支援に関する情報も集めておくと、いざというときでもスムーズに手続きを進められます。
身寄りがない独居老人でも、安心の確保を基盤に据えた環境整備を徹底すれば健康で自分らしい生き方を確立でき、生活をさらに充実させられるでしょう。
終活をする
一人暮らしの高齢者および独居老人になる可能性が高い方におすすめしたいのが「終活」です。終活とは、人生のエンディングプランを立てることを指します。前項でも触れた死後の手続きやお墓の準備のほか、計画や現在の心情・希望をエンディングノートに書き記すなど、終活の範囲は多岐に渡ります。
あわせて、独居老人には、生前に死後の手続きを済ませておくことも求められます。自分の死に関わることを考えるのは気が進まないかもしれませんが、現在置かれている状況に向き合い、あらかじめできる限りの準備をしておくと万が一のことが起こっても安心です。
現代では、終活が注目を浴びており、高齢者だけではなく若年世代でエンディングノートを作成する人もめずらしくありません。終活を行うことで、一人暮らしでも老後や最期を迎える不安感が軽減するうえ、より自分らしい生活を送れるようになるでしょう。
終活に関して、くわしくはこちらの記事をぜひ参考にしてください。
関連記事:https://gee-baa.com/what_is_shukatsu/
見守りサービスを活用する
独居老人が安全な生活を維持するには、見守りサービスを活用することをおすすめします。見守りサービスとは、高齢者の暮らしぶりをチェックし、健康上の問題や犯罪などをはじめとするさまざまなリスクによる被害を最小限に抑えるための手立てのことです。
高齢者の生活には、さまざまな「もしも」がつきまといます。急な病気や火の不始末による火災、詐欺・犯罪被害など、独居老人の生活における心配事は尽きません。また、周囲との関わりが希薄になりがちな独居老人は、万が一のことが起こったとき、発見や対応が遅れがちな点も問題です。
一人暮らしの高齢者は、身の回りの危機管理を自分の手で徹底しなければなりません。危機的状況を早期に発見し、もしものときの不安を解消するためには、ライフスタイルに合う見守りサービスを選ぶことが大切です。
見守りというと、離れた土地で一人暮らししている親のために家族を始めとする周囲の人が利用するサービスだと思っている方も多いでしょう。たしかに、見守りサービスには高齢者の家族の安心を担保するという側面もありますが、独居老人が自らの健康的な生活と安全の質を維持・向上する手段にもなります。
見守りサービスについては、ぜひこちらの記事もご一読ください。
関連記事:https://gee-baa.com/watch_over_the_elderly/
高齢者が自分らしく暮らすためにおすすめしたい事前準備を紹介しました。物理的な環境整備や死後の手続きなど、自らの手による備えも大切です。あわせて、見守りを始めとする外部サービスの手を借り、安心して暮らせる生活基盤を整えましょう。
一人暮らしの高齢者には見守りが必要とはいえ、外部サービスの種類は幅広く、どのような選択肢があるのかわからない方も多いのではないでしょうか。次の章では、見守りサービスの提供元と内容を説明します。
見守りサービスの種類
見守りサービスは、主に次の3つの組織や企業・事業所などによって提供されています。
- 行政・地域自治体による支援
- 高齢者介護施設の利用
- 民間企業・事業者による見守り
各サービスの特徴と具体例をみていきましょう。
行政・地域自治体による支援
行政・地域自治体では、高齢者に向けたさまざまなサービスを提供しています。公的サービスの具体例は、以下のとおりです。
- 配食サービス
- 家庭ゴミ訪問収集サービス
- ICTや緊急通報機器の貸与
- 軽度の生活援助
- バリアフリー工事の補助金支給
- 民生委員による訪問・声かけ
上記のほかにも、民間企業やNPO団体と協力した事業展開や、ふるさと納税の返礼として見守りサービスを提供している自治体もあります。
さらに「地域包括ケアシステム」による各種介護・予防、生活支援などが一体になった高齢者支援も進められています。地域包括ケアシステムとは、深刻化する高齢化社会に備え、地域ぐるみで支援する枠組みを構築する取り組みのことです。行政・自治体では、地域全体と連携した見守りネットワークモデルを構築し、独居をはじめとするすべての高齢者の安全を守っています。
公的サービスなら、無料もしくはリーズナブルな費用負担で利用可能です。一方で、サービス内容は基本的に一定の範囲内であり、個々のケースや細かい事業に対応してもらえるとは限りません。利用を希望する際は、地域包括支援センターや役場の担当窓口、地域の民生委員に相談してください。
高齢者介護施設の利用
老人介護施設の利用も高齢者を見守る手段の一つです。施設の利用方法は、主に下記4つの形態に分かれています。
- 入所
- ショートステイ
- デイケアへの通所
- 訪問介護サービス
介護施設を利用するためには、自治体の窓口で生活機能の「基本チェックリスト」に回答し、要介護認定もしくは要支援認定を受けることが必要です。高度な要介護認定を受けた方は、充実したサービスを受けられるだけではなく、介護保険により費用を抑えられます。
しかし、介護施設は認定区分によって受けられるサービスが異なる点に注意しなければなりません。抱える障がいの程度が軽い方や認定区分が「自立」の場合でも介護予防を中心とする支援事業が利用できますが、十分なサポートが受けられない可能性もあります。
民間企業・事業者による見守り
あらゆる高齢者が利用できるのが民間企業・事業者による見守りサービスです。警備会社や各種ツールのメーカー、配達サービスなど、複数の形態で見守りが提供されています。具体的なサービスの例は下記のとおりです。
- 電話・メールタイプ
- カメラ・センサー
- アプリケーションタイプ
- 家電などのグッズを活用するlotタイプ
- 宅配・宅食タイプ
上記ツール・グッズの中には、遠隔操作による安否確認や緊急通報の機能を備えているものもあります。身寄りがない人の病気・けがおよび非常事態を察知し、自動通報によりもしものときでも迅速に対応することが可能です。また、生活上のサポートや身元保証を提供するサービスも増えてきています。
ただ、幅広いサポートが受けられる反面、かかる費用はサービスによってさまざまです。サポート内容の充実度に比例し、料金も高くなる傾向にあります。とはいえ、予算やニーズに合う内容のサービスを選べば問題ありません。
見守りサービスの提供元およびサービス内容を説明しました。公的サービスや高齢者介護施設による見守りも選択肢の一つではありますが、利用条件やカバーできる範囲に限りがあるうえ、十分なサービスを受けられない可能性もあります。幅広い選択肢から自分に合う見守りを選びたい場合は、民間企業・事業所などが提供するサービスがおすすめです。
しかし、選択肢の幅が広がると、どの見守りサービスを選べば良いのか迷ってしまいますよね。また、数ある見守りサービスの中から独居老人の困りごとを解消してくれるサービスを選定するのは、専門的な知識や情報がない方にとって非常に困難です。そこで、次の章では、一人暮らしの高齢者が自らの見守りサービスを選定する際、どのようなポイントを重視すべきかについて考えていきましょう。
一人暮らしの高齢者に適した見守りサービスの選び方
独居老人が見守りサービスを選ぶときには、以下のポイントに着目しましょう。
- 利用状況
- 使いやすさ
- 利用料金
- 相談のしやすさ
各項目に自らの状況や要望を当てはめて検討し、優先順位をつけて検討すれば、一人暮らしの高齢者にぴったりの見守りサービスが選べるでしょう。
利用上の要望
利用者の生活スタイルや希望する頻度によって、適した見守り方法が異なります。具体的な検討項目は、以下のとおりです。
- 見守って欲しい時間帯
- 人とのふれあいや会話に関する要望
- プライバシーへの配慮
たとえば、常に見守ってほしいなら、カメラ・センサーやアプリによる見守りが最適です。特定の日・時間のみで構わない場合は、電話・メールや宅配サービスと併用した見守りが良いでしょう。見守りサービスに他者とのふれあいや会話を求める方には、訪問タイプのサービスが適しています。また、プライバシーに敏感な方にとっては、常時見張られているような感覚があるツールだとストレスになりやすいため、家電などのグッズを利用したloTタイプが最適です。
使いやすさ
見守りサービスの効果を十分に発揮するためには、操作性も重要なポイントです。いざというときに使いこなせなければ、見守りサービスを利用する意味がありません。説明書を読めば操作できる方にとっては、自分で通報するタイプの見守りでも問題ないでしょう。しかし、高齢者の中には機械が苦手な方もめずらしくありません。
センサーや定期的な連絡・訪問があるタイプの見守りサービスなら、複雑な操作が不要であり、訪問者が少ない傾向にある一人暮らしの高齢者でも安心です。簡単に操作できるツールや、映像や音声で自動的に安否確認ができる見守りサービスもあります。利用し始めてから少しずつサービスの範囲を広げるのも一つの手ですので、自分にとって使いやすいものを選択しましょう。
利用料金
サービスの選定の際にネックになりがちなポイントは、見守りにかかるコストの問題です。見守りは継続が重要であり、どれほど便利なサービスでも費用感がマッチしなければ続けられません。
とはいえ、安いサービスだと内容が十分でない可能性があります。費用の多寡のみに捉われるのではなく、コストパフォーマンスの観点から検討してください。
相談のしやすさ
要望や操作性、コストパフォーマンスに加え、相談しやすい見守りサービスかどうかも要チェックポイントだといえます。一人暮らしの高齢者には大小さまざまな不安・心配がつきものなため、ちょっとしたことでも気軽に相談できる相手がいれば安心です。
サービス内容に関することだけではなく、介護や終活など、独居老人が抱えがちな困りごとに関する知識が豊富な相談先が良いでしょう。
独居老人に適した見守りサービス・グッズの選び方について解説しました。ニーズや感じ方は人それぞれですので、見守りサービスに求める内容を洗い出し、活用できるものを選定しましょう。また、予算とサービスのバランスも大切なポイントであることに加え、困りごとの相談をはじめとする付随サービスやアフターフォローの充実度も見逃せません。
「一人暮らしの高齢者の見守りサービスがあれば安心だけど、ややこしいグッズの操作はできそうにない……」
「独居老人の幅広い悩み相談にいつ・どこからでも乗ってくれる便利なサービスはないのかな?」
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まとめ
今後ますます増加が予想される独居老人を支えるには、見守りサービスの活用が欠かせません。見守りにはさまざまなスタイル・グッズがあるため、自分の要望や好みに合わせ、ぴったりのサービスを選びましょう。
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